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カーボン・オフセットの現場に潜入する

世界自然遺産への「旅」でオフセット ~株式会社エイ・エヌ・ディーの「縄文杉トレッキングガイドツアー」~

世界自然遺産への「旅」でオフセット ~株式会社エイ・エヌ・ディーの「縄文杉トレッキングガイドツアー」~

全国で取り組まれているカーボン・オフセットの取組をご紹介する「プロジェクト潜入企画」。
それぞれのプロジェクトをのぞいてみると、取り組んでいる人々の熱い想いやさまざまな“声”が聞こえてきます。
今回は、世界遺産に登録されている屋久島の人気ツアー、縄文杉へのトレッキングに挑戦!
このツアー、移動などに伴うCO2をカーボン・オフセットしています。
地元のトレッキングツアー会社、株式会社エイ・エヌ・ディーの代表取締役である藤﨑邦昭さんに、カーボン・オフセットに取組んだきっかけや、環境や取組への想いをうかがってきました。
さぁ、屋久島の大自然のなかへ行ってみましょう!

屋久島ツアーそのものをカーボン・オフセット!

鹿児島空港から空路で約30分。九州本島の南に浮かぶ、屋久島に到着します。
自然や登山を愛する人たちの間で「知る人ぞ知る」存在だった屋久島が、突如として脚光を浴びたのは1993年のことでした。日本で初めて世界自然遺産に登録されたのです。
それから20年以上経った今も、屋久島は日本中から多くの観光客を引き寄せる、魅力的な場所であり続けています。

今回潜入するのは、株式会社エイ・エヌ・ディーの「縄文杉トレッキングガイドツアー」。早朝から出発することになりました。
夜明け前の薄暗いなか、参加者を乗せた車がトレッキングルートのスタート地点へ向けて出発します。
ガイドは、屋久島生まれ・屋久島育ちの満園(みつぞの)純平さん。ガイドとして、既に数百回も縄文杉を訪れているとか。

満園さんが、車内でこう話しました。
「みなさん、おはようございます。これから、スタート地点の荒川登山口に向かいますね。
今回みなさんが参加してくださったこのツアーは、カーボン・オフセットという仕組みを利用しています。みなさんが島での移動に使うこの車からはCO2が排出されますが、その分、違うところで同量のCO2を削減しようという取組です」

なんとこのツアーそのものが、カーボン・オフセットされています。このツアーは、株式会社エイチ・アイ・エスのエコツーリズムデスクと共同で開催されていて、東京から屋久島までの移動で排出されるCO2をエイチ・アイ・エスが、屋久島でのガイド車両やバスの燃料使用から排出されるCO2をエイ・エヌ・ディーが、それぞれオフセットしているといいます。まさに、環境に配慮されたエコツアーなのです。
よく見ると、車にもカーボン・オフセットのシールが貼られていました!
まだこの仕組みを知らない人のために、啓蒙活動をしているのだそうです。

トロッコ道をゆく。苔むす森との遭遇

荒川登山口に到着し、いよいよ歩き始めます。
見え始めた森は、原生林の風景。「屋久島には常緑樹の森があります」と、満園さん。
一般的な森と違うと感じるのは、苔が多いこと。苔や木の種類についても、満園さんから説明がありました。参加者はみな、興味津々です。

満園さんによると、屋久島の杉として有名な「屋久杉」とは、樹齢1,000年以上の自生した杉のこと。樹齢1,000年未満の杉は「小杉」、樹齢100年以内の杉は「地杉」と呼ばれ、樹齢が違うだけで木の種類はどれも同じだそうです。


前半のトレッキングは、平らな道。それも、大正12年に敷かれたという林業用のトロッコ道でした。「このトロッコは、昭和時代に伐採した木を運ぶために活発に使われていたんです。つい4、5年前までは倒木の運搬でも使われていました」と、満園さん。
現代でもトロッコがないと運べないなんて…これから進む森の奥深さに、胸が高まります。
でも、気になったのは「伐採」という言葉。参加者たちは、屋久島の悲しい歴史を知ることになります。

「江戸時代、豊かな森に目をつけた藩主がいて、杉を年貢などに使うため、伐採が始まりました。当時は斧で、数日がかりで切っていたそうです。木をそのまま運ぶ手段もありませんから、その場で製材し、運んでいました」(満園さん)

巨木の背景に、伐採の悲しい歴史が

江戸時代以降も伐採は続き、大正時代の末には屋久島の森のほとんどが国有林になり、国による事業が本格化しました。昭和30年代にはチェーンソーが導入され、伐採はピークに達したといいます。今残っている屋久杉は、昔のわずか約15%だといわれているとか。

しばらく歩くと、森のなかにこつ然と更地が現れました。小杉谷集落跡です。
「昭和45年までこの地域で伐採が行われていて、ここには当時のエリートたち約500人が住む小さな町がありました。この更地には、当時小学校があったんです。輸入材の登場により、ようやく事業が縮小されました」(満園さん)

さらに森の奥深くへと入っていきます。
三度の転生を繰り返した「三代杉」や、複雑にうねる幹をもつ「仁王杉」、胸高周囲が13.8mの「ウィルソン株」、推定樹齢が3,000年の「大王杉」など、数々の巨木がルート沿いに立っていました。
途中で、数頭の屋久シカにも出くわしました。参加者はその出会いに励まされるかのように、足を進めていきます。

ついに出逢えた縄文杉の存在感に、畏怖の念

出発から約6時間。途中、急な階段道などもあり、参加者からは「まだかな…」という疲労気味の声も。
「みなさん、もうすぐです!」と、満園さん。
ついに、目的地の縄文杉に到着しました!

大きな、大きな縄文杉。その樹高は25.3m、胸高周囲は16.4m。ごつごつとした木肌や枝ぶりは、まるで炎があがるかのよう…。
参加者たちは、達成感と驚きとで、目が離せない様子です。

「縄文杉は1966年、屋久町役場の観光課長だった岩川貞次さんが、江戸時代の資料をもとに発見しました。樹齢は、2,170年の説と、7,200年の説があります」(満園さん)

再発見からまだ50年たっていない縄文杉。満園さんに、縄文杉や屋久島への想いを聞いてみました。
「僕は子どもの頃から、父に連れられてよく家族で縄文杉へ来ていましたね。当時は世界遺産になる前で登山客はいなかったので、いつ来ても貸切のような状態でした(笑)。
今は登山客が増えましたが、そのぶん自然が壊れたなどとは感じていません。屋久島の登山客は、とてもマナーがいいんです。今、みんなの手によって自然は守られていますし、今後も守り続けていきたいですね」(満園さん)

“一瞬”を生きる人間が今できることとは?

ツアーを終え、エイ・エヌ・ディーの代表取締役である藤﨑邦昭さんに話をうかがいました。藤﨑さんは、鹿児島県出身。もともとは鹿児島市で銀行に勤めていたそうですが、屋久島に魅せられて退職・移住し、同社を2012年夏に設立。2013年にカーボン・オフセットのツアーを開始しました。

ツアーにカーボン・オフセットを導入した理由は何だったのでしょう。
藤﨑さんは、次のエピソードを教えてくれました。
「あるとき、40年ぶりに屋久島へ来たというご夫婦にお会いしました。40年前とまったく同じ場所で、ご夫婦で仲良く写真を撮ったんです。そのとき彼らは、自分たちは年を取ったけれども、背景の自然はまったく変わっていないと感じたそうです。『自然からみれば、私たちが生きているのは“一瞬”なんですね』と言っていました」(藤﨑さん)

藤﨑さんは、その“一瞬”を生きている人間が自然を壊してしまったことに、胸を痛めているそうです。
「世界遺産、つまり森林生態系保護地域に指定されているのは、島全体の22%だけなんです。言い換えると、それ以外では環境破壊が進んでいるともいえるんですよ。
伐採は昭和40年代まで続いていましたから、今も島にいらっしゃる80~90代の方たちは、その頃現役です。その方たちが『昔、縄文杉よりもはるかに大きい木を、何本も切ったことがある。縄文杉は小さいほうだ』とおっしゃるんです。今だからこそ、こういう取組を通じて、少しでも屋久島に貢献したいと考え、カーボン・オフセットを導入したんです」(藤﨑さん)

地球に想いを馳せる旅が未来につながる

「私たちは、壊された後の屋久島しか知らない。それでも今の自然を守り続ければ、いつか未来の人たちは本当の森を見ることができる」。藤﨑さんはそう考え、ツアーやガイドの話を通じて、参加者に本当の屋久島を知ってもらえるように気を配っています。

参加者は東京などの都市部から来る人がほとんど。環境に興味のある人たちが多いそうです。藤﨑さんはクレジットとして「参加者の生活圏に少しでも近いところのCO2削減事業を」と、山梨の県有林活用プロジェクトを選びました。

このツアーを選んで参加した方々からは「旅の移動では、車などからどうしてもCO2を排出してしまう。でもそれがオフセットされれば、環境に貢献できる」という声があったそうです。

藤﨑さんは、貴重な環境をもつ島での体験を、多くの人に持ち帰ってほしいと願っています。
「都会の生活のなかで環境について考えるのはむずかしいですよね。屋久島で自然を感じたり、カーボン・オフセットの仕組みを知ったりすれば、地球のことをより考えられると思うのです。
私たちは、そうしたお手伝いができればと考えています。そして、自然が守られ、未来を生きる人たちが本当の豊かな森を見ることができたらいいですよね」(藤﨑さん)

株式会社エイ・エヌ・ディー

〒891-4205
鹿児島県熊毛郡屋久島町宮之浦368-19

電話番号0997-42-2688
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