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カーボン・オフセットの現場に潜入する

被災地の森と都市をつなげて、復興へ ~宮城県・南三陸町と登米市の取組み~

被災地の森と都市をつなげて、復興へ ~宮城県・南三陸町と登米市の取組み~

全国で取り組まれているカーボン・オフセットの取組をご紹介する「プロジェクト潜入企画」。
それぞれのプロジェクトをのぞいてみると、取り組んでいる人々の熱い想いやさまざまな"声"が聞こえてきます。
今回は、東日本大震災から4年が経った宮城県へ。企業や県のバックアップのもとカーボン・オフセットに取り組み始めた、熱いエリアがあるそうです。カーボン・オフセットは復興支援にも役立っているのでしょうか。
さぁ、行ってみましょう!

カーボン・オフセットに“希望の光”を感じた

はじめに訪れたのは、南三陸町。
震災以降、多くの建物が取り壊され、ほとんど更地になっている沿岸部を歩いていると、震災の教訓を伝える遺構として保存の是非が議論されている、南三陸町防災対策庁舎が目に入ります。この庁舎について、県は時間をかけて話し合えるよう、震災から20年が経過するまでの2031年3月までの県有化を町に提案しています。
震災から4年が経った今、この風景を目にすると、復興への長い道のりを感じずにはいられません。

最初にお話を聞いたのは、南三陸森林組合の参事、山内日出夫さんです。
「南三陸町は、東日本大震災で沿岸部が大きな被害を受けました。報道などで、町名を聞いたことがある方も多いと思います」と、山内さん。もともと南三陸町には、どんな人も歓迎して受け入れる気風があったことから、報道も一斉に入ったのではないかと感じているそうです。

「震災後、いろいろな方が町へきて復旧作業をサポートしてくださるなか、ANA(全日本空輸株式会社)さんは震災直後の4月下旬から避難所に除雪車によるお風呂の給湯から、町とのきずなができていました。
あるとき、ANAから教えていただき初めて知ったのがカーボン・オフセットだったのです。これはやる価値があると思いましたね。
実は震災前、木材価格は低下するばかりで、歯止めをかけないといけないな…と感じていました。でも、山づくりは自分たちだけで質素にやるものだとも思いこんでいたのです。そんな矢先にあの震災がありました。カーボン・オフセットの仕組みを知って、木材を売ることだけを目指すのではない"希望の光"を感じたのです」(山内さん)

震災で得た縁とカーボン・オフセットで町を活性化

南三陸町は面積の77%が森林です。東日本大震災では、沿岸側の山に津波による塩害はあったものの、森林の9割は問題がなかったといいます。
しかし震災後、被災した町全体としては混乱状態。さまざまな後片付けや杉の処理などがあり、本来の仕事である山のほうへはまったく行けない日が続いたそうです。

「震災前から山はひどく荒れていました。一度荒れてしまうと、元に戻すのに時間がかかるんです。少しでも早く、山の復旧をしたかった」。そうした想いがつのっていたころ、ANAから「長期的な支援をしたいから是非一緒にやりましょう」とカーボン・オフセットのためのクレジットの創出を提案されたといいます。まさにグッドタイミング。南三陸森林組合は提案を快諾し、プロジェクトが始まったのです。

「27年度で高台移転の造成なども終わるので、28年度からは山の手入れができるでしょう。そこでカーボン・オフセットを活用していければいいなと考えています。現在、クレジットの検証が行われているところで、5月には認証され、来年度の6月から販売する予定です」(山内さん)

並行して、ANAの社員が南三陸町まで来て、山の手入れをするという交流も始まっているそうです。森づくりが、地方と都会を結ぶきっかけになっているのです。
被災地の復興への関心が全国的に薄れてきていることが懸念される今、「森が媒介となって地方に関心をもつ人が少しでも増えれば」という期待は高まっているようです。

クレジットが完売した宮城県の取組み

もともと宮城県では、平成23年度に大崎地域の県有林で、24年度には栗原地域の県有林で、それぞれクレジットを創出し、販売に取組んだ実績があるそうです。

宮城県東部地方振興事務所登米地域事務所で林業振興部 林業振興班の技術主幹を務めている唐澤悟さんは、こう教えてくれました。「取得したクレジットは、販売可能量で合計1,868t-CO2でした。主に関東や関西の企業様や団体等に興味をもっていただき、おかげさまでクレジットは完売することができました」。
なんと、震災復興や社会貢献への意識が高い企業を中心に購入され、完売したといいます!
それらの資金は新たな森林整備に使うことができるので、震災からの復興住宅の建設に必要とされる優良な木材を供給することに繋がり、まさに好循環が生じているのです。
その成功をきっかけに、宮城県北部に位置する登米(とめ)市でも、クレジットを創出する取組みがそれぞれ始まったとか。

登米市は岩手県と接していて、豊かな緑や水に恵まれた地域です。
「登米地域は県内でも特に森林林業がさかんで、資源への意識が高い地域です。でも木材価格は低迷しており、産業としては非常に厳しい状況にありました。新たな試みに対して、すぐに手を上げたのが登米地域だったのです。」(唐澤さん)
このエリア、カーボン・オフセットが盛り上がっているようです!

カーボン・オフセットが森の手入れを促進

総面積の41%を森林が占める登米市は、24年度から、市有林の間伐などの整備を行う『登米市市有林間伐促進 森林吸収J-VERプロジェクト』の準備を始め、25年5月に認証を受けました。
以前から森林の整備は行っていましたが、クレジットを取得したことで、その活動に力を入れやすくなったといいます。

登米市の担当者は、産業経済部 農林政策課 林業振興係の主事、伊藤祐司さんです。

「クレジットの売却によって得られた資金は、健全な森林の育成などにまた活用できますから、これまで以上に森林整備に取り組むことができるようになりました。
認証された販売可能量は3,698t-CO2で、企業や大学、個人の方などに購入していただきました。なかには、結婚披露宴や学園祭の開催によって排出したCO2をオフセットした方もいたんですよ。
また、切り出された木材は、東日本大震災で甚大な被害のあった南三陸町の災害公営住宅や仮設住宅などの建築に活用しています。登米市の森林は、被災地の復興を支える役割も担っているんです。
現在まだクレジットは3,400t-CO2ほど残っていますので、これから販売していかなければと思っているところです」(伊藤さん)

地域発・オフセットできるステッカー

そこで、さらに販売を促進するため、県と登米市、登米市内にある米川生産森林組合の三者で、「登米地域森林吸収オフセット・クレジット普及広報連絡会」がつくられました。
「一般の方たちにも幅広くアピールするには、どうしたらいいだろう…?」
みなさんの議論の末、あるコラボレーションアイテムが生まれました。
それが、「オフセット・クレジット付きステッカー」です。

CO2の「C」の字と、この地域のシンボルであるイヌワシが印象的なデザイン。1枚324円(税込)で、市内の道の駅などで誰でも買うことができます。
1枚につき10kg-CO2のオフセット・クレジット(J-VER)が付加されていて、購入者が排出するCO2が10kgオフセットされることになるそうです。

「ステッカーは2,000枚作りましたので、20t分のオフセットということになります。私自身も宣伝しまして(笑)、今のところ1,000枚ちょっと売れました。都内でのイベントでも好評でしたし、このごろはこの地域でも車などに貼られているのを見かけるようになりました。収益は、市と組合のプロジェクトにそれぞれ還元され、森づくりに活用されます。
この地域は車を使う人が多いため、チラシなどでは、ガソリンから排出されるCO2に例えて説明しています。例えば、ガソリン1リットル当たりのCO2排出量は2.32kg-CO2です。シール1枚の10kgの場合、4.31リットル分のガソリン消費に該当します」(唐澤さん)

また、登米市では、「矢羽(やばね)集成材」と呼ばれる木目が特徴の木製ハガキやコースター、うちわ、マウスパッドなどの購入記念グッズも、クレジットを購入してもらった数量に応じてプレゼントしているそうです。
このクラフト、杉の間伐材を使って製材し、職人の技術により組み合わせてプレスし、木目をつくりだしているといいます。美しいデザインです。矢羽集成材を使用した様々な木工品は、市内「道の駅津山」のクラフトショップ「もくもくハウス」で購入することができます。

クレジット購入できのこや山菜がもらえる!?

同じ年に認定され、市の取組みと足並みを揃えながら森林整備をPRしているのが、米川生産森林組合です。
参事の遠藤克美さんは「初めてカーボン・オフセットについて聞いたときは、すぐには理解できませんでしたね。『空気が売れるんだろうか?』と思ったものです(笑)」と話します。
認証された販売可能量は2,260t-CO2。人工林の間伐による整備保全でCO2を吸収し、そのクレジットを売却しています。得た資金はどのように地域振興に役立っているかを明らかにするため、特定財源として基金に積み立てて管理しているそうです。

さらに米川生産森林組合では、ユニークな取組みを行っています。
クレジットを1t以上購入した人・団体は、「森林体験ツアー」で植林や下草刈り作業に参加できるのです。
とくに人気なのが、ツアー内でできる「きのこ狩り」または「山菜狩り」。

「去年秋、東京から来てくださったある企業様には、下草刈り作業の後にマイタケ狩りを体験してもらいました。森林を生かしたきのこの栽培は、より天然に近い栽培方法なので、味と食感が違いますよ。春には、山ウド、タラノメ、ワラビなどの山菜狩りができます」(遠藤さん)

足を運べない人にも、自然栽培のマイタケまたは杉の間伐材のオリジナル名刺入れをプレゼントするという特典サービスがあるそうです。
購入者も楽しみながら現地での体験ができ、交流も深めていける、すばらしい工夫です。

人との交流を生む「森づくり」が復興や地域活性に

登米市・米川生産森林組合の取組のように、カーボン・オフセットを通じて様々な人とかかわりが生まれることで、これから始まる南三陸町の取組が後押しされることが期待されます。
カーボン・オフセットの本格的なスタートを控えた今、南三陸町では山が本来の豊かさを取り戻す時期に入ったのです。

南三陸町の間伐を終えた杉の森には、木々が呼吸しやすそうな清々しさが漂っていました。
南三陸杉を切った断面図は、美しい色合いをしています。中心部は赤茶色で、周りは白太。中心のほうが硬い性質があるそうです。

「人との交流を通じて森林を総合的に活用できると気付きました。カーボン・オフセットは、地域活性化にも結びついていると感じています。
私たち、地方にいる人間は、山をつくることはできても情報を都市に流すことは苦手なんです。都市の方や企業様のお力をお借りしながら、今後共に歩んでいきたいと思っています。町の復旧から再生、そして発展まで、これから頑張っていきたいです」(山内さん)

宮城県 東部地方振興事務所 登米地域事務所

〒987-0511
宮城県登米市迫町佐沼字西佐沼150-5

電話番号0220-22-6125(林業振興班)
ホームページhttp://www.pref.miyagi.jp/soshiki/et-tmsgsin-r/
南三陸森林組合

〒986-0728
宮城県本吉郡南三陸町志津川天王山138-3

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登米市 産業経済部 農林政策課 林業振興係

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電話番号0220-34-2311(代)
0220-34-2716(林業振興係)
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米川生産森林組合

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