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カーボン・オフセットの現場に潜入する

おいしい酒造りに欠かせない水を守る ~大利根酒造有限会社の「左大臣 純米酒」~

おいしい酒造りに欠かせない水を守る ~大利根酒造有限会社の「左大臣 純米酒」~

全国で取り組まれているカーボン・オフセットの取組をご紹介する「プロジェクト潜入企画」。
それぞれのプロジェクトをのぞいてみると、取り組んでいる人々の熱い想いやさまざまな“声”が聞こえてきます。
今回は、群馬県北部の沼田市へ。環境への意識から、カーボン・オフセットに取り組み始めた造り酒屋があるそうです。
さぁ、行ってみましょう!

江戸時代から続いている酒造り

風光明媚な山あいにある、沼田市。
ここに、歴史ある造り酒屋「大利根酒造」があります。

「創業は明治35年です。私が4代目になりますが、実はこの場所で酒造りが始められたのは江戸時代中期。なぜ分かったかというと、屋敷内にある酒造りの神様、松尾様を祭った石宮の碑文に『元文四年』と刻まれているからです。西暦で言えば1739年にあたりますから、約280年酒造りが続いていることになりますね」

そう話すのは、代表取締役の阿部倫典(つねのり)さん。
阿部さんによれば、世界で200年以上続いている会社は6,000社ほどしかなく、なんとその半分が日本にあるそうです。最も多いのは呉服屋で、その次に酒屋が多いといいます。

和装姿がお似合いの阿部さん。着ているのは、先代の持っていた結城紬だそうです。
「着物は3代、つまり100年使えるといわれています。反物1本からできる着物は、洋装のように裁断して布を無駄にしてしまうこともないし、とってもエコなんです」(阿部さん)

小さな企業がカーボン・オフセットを始められるとは驚いた

そんな大利根酒造で、2015年4月からカーボン・オフセットの取組が始まりました。大利根酒造の商品の一つ、「左大臣 純米酒」(720ml)3,000本を製造や輸送の際に排出されるCO2をオフセットし、4月からカーボン・オフセット認証も取得したのです。
きっかけは何だったのでしょうか。

「私はNPO法人『地球温暖化防止ぐんま県民会議』で、10年前に設立した当初から理事長を務めています。県内の温暖化防止の啓発活動推進のため、CO2削減のための活動など、群馬県と環境省の事業を請け負っています。
この活動のなかで、以前からカーボン・オフセットの存在は知っていました。でも、国や一流の大手企業がやるものなのだろうと思いこんでいて、カーボン・オフセットは遠い存在でしたね」(阿部さん)

さらに、同法人の活動のほかに、地域の子どもたちの環境教育活動にも携わっている阿部さんは、環境やCO2削減への興味をより深めていました。
そんな頃、あるプロバイダーから「カーボン・オフセットを始めませんか」と提案され、「自社でもできるのかと驚いた」といいます。

「カーボン・オフセットが身近な存在になるとは、正直思っていませんでした。お話をいただいたとき『こんなに小さな企業でもいいの…?』と思ったほどです(笑)。まさか自社の商品が対象になるとは思ったことがありませんでしたから」(阿部さん)。

きれいな水を守り続けていくためには

大利根酒造は、周辺地域の自然環境が豊かなことから、もともと「小さな酒屋でも、環境に配慮して楽しい酒を造る」ことをモットーにしていたといいます。

「この地域は水が豊富で、かつきれいなところ。うちにある井戸の水は尾瀬水系です。昔は30数件もの酒屋があったんですよ。今も、酒造りの水は弊社の地下を流れる伏流水を使っています。酒造りと自然環境は切っても切れないものです」(阿部さん)

大利根酒造の裏山には広葉樹がたくさん生えている美しい森があり、山々に囲まれています。
実は、この地域一帯は都心の人々にとって縁のあるエリア。
近隣にあるみなかみ町須田貝(すだがい)にはダムがあり、これが都心の人々の飲み水になっているのです。そのため“東京の水瓶”と称されているエリアの一つでもあります。飲み水のほか、地元の農業用水や工業用水にもなっているそうです。

大利根酒造は、カーボン・オフセットに用いるクレジットに、この須田貝にある日本製紙木材の社有林から生まれたクレジットを選択しました。森林による浄化機能で、銘水が保たれる効果があるからです。

「CO2を減らすため森を守ることはもちろんですが、森を守ることが水を守ることにつながっていることに意義を感じています。森や山が守ってくれているきれいな水は、酒造りの命になるからです。我々はきれいな水があるからこそ、酒造りができます」と、阿部さん。「一滴でも地域の水をきれいにできるのであれば、有益な活動だと考えています。」

自分も大好きなお酒「左大臣」をオフセットに!

ところで、対象商品として「左大臣 純米酒」を選んだ理由は何だったのでしょうか。
「これが自分で飲みたいお酒なんです(笑)。どうせやるんだったら、そのほうがいいなと思いまして」と、笑う阿部さん。自宅でもこれをぬる燗で味わっているそうです。

さらに、そのちょっと変わったネーミングについてもたずねました。
「不思議に思われる方が多いようですね。由来は、二条天皇の時代にさかのぼります。時の左大臣・藤原常房(つねふさ)の次男、尾瀬三郎が都を追われ、今や尾瀬を代表する山である燧ヶ岳(ひうちがたけ)のふもとの岩穴に住み着きました。
三郎は文武両道に秀で、里人とも気さくに交わったので『尾瀬の左大臣』と親しまれたそうです。尾瀬沼の名は、尾瀬三郎の名に因んでつけられたんですよ。弊社は尾瀬のふもとにある唯一の造り酒屋なので、あやかろうと『左大臣』と名付けました」(阿部さん)

自然を守り、酒造りを継承していく使命感

美しい尾瀬のふもとで生まれ育ち、酒造りを愛している阿部さんは、感じている環境の変化についてこう話します。

「人の手が入って、環境に変化がありましたね。30年前にはこのあたりには寺以外の人工建造物がひとつもなかったんですが、ゴルフ場や道路、ソーラー発電パネルなどが入って、景色が変わりました。
景色は少し変わったけれど、ありがたいことに水質は変わっていない。この地の自然や風土に根付いた『地』の酒造りを伝承してきたからこそ、自然を守っていきたいです」(阿部さん)

自然を守りながら、酒造りを継承していくこと。そこに、阿部さんは使命を感じています。

「お酒には、日本文化のすべてが入っていると私は思っています。
なぜかというと、世界中の多くの民族がビールやワイン、スコッチ、テキーラといった国民酒を持っているのに対して、主食であるお米をアルコールに加工している国は少なく、日本はその一つだからです。

昔は温度計も冷蔵庫もなかったし、お酒は“話してくれない生きもの”なのに、職人が温度やタイミングを読み取って、技でもってお酒を造ってきたんです。お酒の制作過程には歴史がつまっています。
また、お酒は酒席で人と人のつなぎ役もします。すばらしい文化だと思うんですよ。これを、たとえ細くてもいいからいかに継承できるかです」(阿部さん)

今は1滴でも、いずれは大きな力に

大自然の恵みから生まれた生粋の地酒。それを造る環境を守っていくためにも、カーボン・オフセットの存在は重要です。

「カーボン・オフセット対象である一般的な商品は少しずつ増えていますけれど、まだ少ないですよね。あまり知らない消費者もいることでしょう。ところが、環境問題に目を向けている方にアピールすると、そういう商品を使うよう意識してくださるんです。
弊社がオフセットしたCO2は、水でいえば1滴くらいのものかもしれないけれど、これが10、100、1,000になれば、大きな力になります。
小さい企業でも簡単にできるということを皆様に伝えられたらいいなと考えています。小さな民間企業や個人でも取り組んでいくことができるのがカーボン・オフセット。そのきっかけになれれば嬉しいですね」(阿部さん)

大利根酒造有限会社

〒378-0121
群馬県沼田市白沢町高平1306-2

電話番号0278-53-2334
ホームページhttp://www6.wind.ne.jp/sadaijin/
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