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カーボン・オフセットの現場に潜入する

りんごのスイーツでオフセット ~有限会社ほんだ菓子司の「林檎ロマン」~

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全国で取り組まれているカーボン・オフセットの取組をご紹介する「プロジェクト潜入企画」。
それぞれのプロジェクトをのぞいてみると、取り組んでいる人々の熱い想いやさまざまな”声”が聞こえてきます。
今回は、カーボン・オフセットに取り組み始めた、宮城県仙台市にあるバス会社へ。1978年に創業された、地域密着型のバス会社です。

路線バスとカーボン・オフセットの関係についてうかがいます。
さぁ、行ってみましょう!

市民の生活必需品の路線バスをカーボン・オフセット!

仙台駅前から、愛子駅前や仙台ヒルサイドアウトレットを経由し、仙台西部の錦ケ丘6丁目までを走っている、愛子観光バスの路線バス。
錦ケ丘は1989年から分譲が開始されたニュータウンで、今も多くの人が移り住んでくる人気エリア。子どもの急増により小中学校の新設も決定しています。毎日1,100~1,200人が利用している路線だとか。

バスに乗車すると…、車内に貼ってあるポスターを発見しました!

このバス、カーボン・オフセットに取り組んでいるようです。
「このバスの走行によって排出されるCO2をオフセットしています」と書いてあります。そのとなりには、認証マークも! オリジナルで制作されたポスターです。
乗車口付近や後部にも、マーク入りのステッカーが貼ってありました。
仙台市民の“足”として運行されている交通手段が、カーボン・オフセットを導入しているとは画期的です。路線バスでカーボン・オフセットに取り組み、認証を取得したのは、全国でも初めての試みだそうです。

「空気を汚さないバス走行を」という昔からの想い

愛子観光バスの代表取締役、佐藤善明さんにお話をお聞きしました。
カーボン・オフセットの導入のきっかけは何だったのでしょうか。

「お付き合いのあった会社の方からの提案で、話を聞いて即決したんです。なぜなら、バス会社の“環境に悪い”というイメージを払拭したいと以前から考えていたからです」(佐藤さん)

「もともと弊社は貸切バス会社です。路線バスの免許ってなかなか取れないんですよ。それでも錦ケ丘ニュータウンでの需要が高まったことで、お客さんに喜んでもらいたいなと思いましてね。2004年、仙台では実に52年ぶりの新規参入として、東北運輸局から認可がおりたんです」(佐藤さん)

お金がなかったため、中古バスを購入して始めたそうです。それが、大気汚染につながる排気ガスを多く出すような車両だったとか。
「住民の皆さんに迷惑をかけているなぁ…と思いながら、3年ほどその車両を使いました。その時の、申し訳ないな、環境問題に取り組まないといけないなという気持ちはずっと私の中に残っていたんです」(佐藤さん)

東京などの都会では、車両の排気ガス規制が進み、空気がきれいになったという印象がありますが、地方では違っているそうです。「東京などでは排ガスが少ないバスが使われていますけれど、地方にはそうした規制がないんです。よって地方では現在でも、路線バスに『たくさん煙を吐いて走っている』というイメージを持っている人が少なくない。バスの後ろを走っていると真っ黒な煙が上がることもあるんですよ」と、佐藤さんは残念そうに語ります。

エコドライブの推進などのひたむきな努力

環境に負荷をかけないバス運行を目指していた佐藤さんは、排気ガスの少ない車両を積極的に導入し、2014年にはさらにデジタル・ドライブ・レコーダーを導入しました。これは、車両の走行距離や時間、加速度やアイドリングストップなどの走行データを自動的に記録する装置で、安全運転管理の他、エコドライブを推進できます。

「デジタル・ドライブ・レコーダーは運転に点数がつくのですが、プロのドライバーですから、だいたい100点をとるんです。地球温暖化対策につながるCO2排出量や燃費なども表示されます」と、佐藤さん。大手バス会社では導入しているところが多いそうですが、愛子観光バスと同様の規模の会社で導入しているところは珍しいといいます。

カーボン・オフセットに出会う前からそうした高い環境意識を持っていたからこそ、カーボン・オフセットの取組を即断できたようです。
「カーボン・オフセットのことを初めて聞いたときは、うちのバスの運行によって排出されるCO2を、どこかで削減して相殺し、地球温暖化対策になるとはすばらしい仕組だと感じました。そういう取組ってなかなかありませんから、すぐにやってみようと思ったんです」(佐藤さん)

市民にカーボン・オフセットをPRする

そうして2015年1月からカーボン・オフセットをスタートしました。
愛子観光バスで保有している路線バスの8台すべての軽油使用量を対象に、一年間に排出するCO2、計235t-CO2が算定されました。デジタル・ドライブ・レコーダーのデータを使用することで、CO2の計算をスムーズに行うことができたそうです。

「導入後は『地球温暖化防止に少し貢献できているんだ』と思うことができ、『CO2を相殺できている!』と個人的にもスッキリしました(笑)。ニュータウンの路線バスですから、子どもや学生、会社員など毎日のように乗る人が多いでしょう。うちのお客様は、カーボン・オフセットのことを知っている人が多いんじゃないかな」(佐藤さん)

佐藤さんや同社の運転手である山田和義さんは「車内や車両に貼っているカーボン・オフセットのポスターを見て、バスの運転手に『これは何なんですか』と尋ねられる乗客もいらっしゃいます」と話します。

クレジットには、岩手県大船渡市で鶏肉ブランド「南部どり」を販売する株式会社アマタケの「重油ボイラから国産間伐材を利用した木質バイオマスボイラへの更新プロジェクト」を選びました。「地産地消という意味で、被災県で選ぼうと思いました。今後交流をはかっていきたいです」と、佐藤さん。

カーボン・オフセットの導入は、新聞に掲載され、反響がありました。
そのため、路線バスの他に運行している貸切バスでもカーボン・オフセットができるようにしました。
実際に、仙台市地球温暖化対策推進協議会が視察に使うバスをカーボン・オフセット付きの貸切バスにしました。バスの出発前には、カーボン・オフセット証明書が同協議会に授与されたといいます。

3.11で生まれた“利益”を環境貢献にまわす

また、愛子観光バスは、太陽光発電設備も導入しています
きっかけは、東日本大震災でした。

「震災当時は状況がどこも混乱していて大変だったので、ハッキリ覚えていないのですが、震災から3日経った頃でしょうか。とにかく必死でガソリンや運転手を確保して、市民やボランティアのための臨時バスや、捜索用のバスを多数運行しました。交通全体が麻痺していたから、バスを運行しないと復旧は進まないと思ったんです」(佐藤さん)

佐藤さんは当時の写真も見せてくれました。
当時はガソリン不足により、市民は自家用車にガソリンを入れられず、バスが主要な交通手段だったのです。稼動できたのはバスくらいで、震災から2ヵ月ほどは電車も動きませんでした。
後日、バスの運行を感謝され、同社は錦ケ丘の自治会から感謝状を受け取ったそうです。

佐藤さんは、それらの運行による利益を、そのまま太陽光発電に使おうと考えたのだといいます。
「原発事故があって、電気の使用についても考えさせられました。そこで自分ができることとして、小さくても自社に発電所を作ればいいんだ、と。2012年、太陽光パネルを本社の敷地に設置し、発電を始めました。当時は蓄電の設備は高価だったため、発電された分は売電するようにしました」(佐藤さん)

売電の金額は、季節や天候により月に3~7万円。総額が年間30~40万円になり、その分をカーボン・オフセットのクレジットを購入する費用に活用したそうです。
震災による売上が、太陽光による電気になり、CO2の相殺にまでつながっていく──。
この好循環が市民の“足”を支えています。

愛子観光バス株式会社

〒989-3124
宮城県仙台市青葉区上愛子大岩1-3

電話番号022-392-6139
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